ミトコンドリアとは?|私たちの生命活動を支えるエネルギー産生器官

ミトコンドリアとは、私たちの生命活動に欠かせないエネルギー産生を担う細胞小器官。考える、心が動く、食べる、消化する、運動する、息をする、心臓が脈打つ、夢を見る……。起きているときも眠っているときも、私たちの活動を支えています。

こんなにも身近なのに、ふだんその存在を意識することはほとんどありません。この記事では、ミトコンドリアがどこにいて、どんなしくみでエネルギーをつくっているのか、その構造や働きを一緒にみていきましょう。

目次

ミトコンドリアとは?

ミトコンドリアとは、私たちの身体をつくる多くの細胞の中に存在し、生命活動に必要なエネルギーの産生を担う細胞小器官です。笑う、怒る、考える、感じる、食べる、呼吸する、歩く、踊る、歌う、眠る、音楽を聴く、大切な人やペットを抱きしめる……そんな当たり前の毎日も、細胞の中で働くミトコンドリアに支えられています。

ミトコンドリアは細胞の中にある小さな器官

私たちの身体は、たくさんの細胞からできています。細胞の中には、「細胞小器官(さいぼうしょうきかん)」と呼ばれる、異なる役割をもつ小さな構造がいくつもあり、ミトコンドリアもそのひとつです。

ミトコンドリアの大きさは、およそ1μm(マイクロメートル)。1μmは1mmの1000分の1で、人の髪の毛の太さよりもはるかに小さく、肉眼では見ることができません。そんなミクロの世界で、ミトコンドリアは私たちの生命活動を支えています。

ミトコンドリアは身体の多くの細胞に存在する

ミトコンドリアは筋肉や心臓、脳をはじめ、身体のさまざまな場所で働いています。胃腸や肝臓などの臓器はもちろん、神経や血管をつくる細胞にもいます。ただし、すべての細胞にいるわけではありません。たとえば、酸素を全身へ運ぶ成熟した赤血球にはミトコンドリアがいません。

また、ミトコンドリアの数や形、性質はどの細胞でも同じではなく、その細胞が担う仕事や必要とするエネルギー量などによって異なります。ひとつの細胞の中にたくさんのミトコンドリアがいることもあり、細胞の仕事に合わせて、それぞれの場所で働いています。

ミトコンドリアのおもな役割はATPをつくること

ミトコンドリアのおもな役割は、私たちが食事からとった栄養素などをもとに、生命活動に使えるATP(アデノシン三リン酸)をつくること。ATPは私たちの生きていくために欠かせない物質で、ミトコンドリアはその産生において中心的な役割を担っています。

つくられたATPは、たとえば次のような生命活動に使われます。

◇筋肉を動かす
◇心臓を動かす
◇脳や神経を働かせる
◇体温を保つ
◇活動したあとの身体を回復させる(疲労回復)
◇肌などの細胞をつくり、入れ替える(肌のターンオーバー)

つまり、走ったり運動したりするときだけでなく、じっとしているときも、眠っているときも、私たちの身体はATPを使い続けています。

ミトコンドリアは二重の膜と「クリステ」をもつ

ミトコンドリアと聞いて、中学校の理科で習った記憶がよみがえる人もいるかもしれません。教科書などでは、楕円形の中にひだひだとした線が描かれた、独特な形で表されています。

ミトコンドリアを包んでいるのは、「外膜」と「内膜」という二重の膜。内膜の内側にある空間は「マトリックス」と呼ばれ、エネルギー産生にかかわるさまざまな反応が行われています。

ここで少し想像してみてください。ミトコンドリアの大きさは、わずか1μmほど。その小さな器官の内部に、さらに膜で仕切られた空間があり、生命を支えるための反応が絶えず進んでいるのです。

特徴的なのが、ひだひだの部分。内膜の一部がミトコンドリアの内部へ張り出すようにつくられた、「クリステ」と呼ばれる構造です。クリステにはATP産生にかかわるしくみが集まっており、こうした構造をつくることで、限られた空間の中でも広い膜面積を確保できます。

つまり、ミトコンドリアのあの独特なひだひだは、ただの模様ではありません。小さなミトコンドリアの中で効率よくATPをつくるための、大切な構造なのです。

ミトコンドリアは形を変えながら活動している

教科書などでは楕円形で描かれることの多いミトコンドリアですが、実際には決まった形をしているわけではありません。細長く伸びたり、互いにつながったり、反対に分かれたりしながら、絶えず姿を変えています。

ミトコンドリア同士がつながることを「融合(fusion)」、ひとつのミトコンドリアが分かれることを「分裂(fission)」といいます。細胞の中では、こうした融合と分裂を繰り返しながら、必要に応じて形や配置を変えています。

この変化は、単に形が変わっているだけではありません。ミトコンドリアの働きを保ったり、内部の成分をやりとりしたり、傷んだ部分を切り離して処理につなげたりするなど、ミトコンドリアの品質を保つうえでも重要な役割を担っています。

ミトコンドリアは、細胞の中に置かれたままの小さな「発電機」ではなく、周囲の状況に応じて姿を変えながら活動する、動的な細胞小器官なのです。

ミトコンドリアがつくるATPとは?

ここまで何度も登場してきた「ATP」。ミトコンドリアがつくるATPは、私たちの身体でエネルギーを受け渡す役割を担う物質で、「エネルギー通貨」とも呼ばれています。

食べたり、歩いたり、考えたり、眠ったり……。私たちが生きていくためには、さまざまな場面でATPが必要です。では、ATPとはどのような物質で、私たちが食べたものからどのようにつくられるのでしょうか。

ATPは生き物の生命活動を支える「エネルギー通貨」

ATPは、人間だけでなく、動物や植物、細菌など、さまざまな生き物の細胞で使われている物質です。

「エネルギー通貨」とたとえられるのは、生命活動に必要なエネルギーを受け渡す役割を担っているから。私たちが食べたものに含まれるエネルギーを、そのまま筋肉や脳などで使えるわけではありません。細胞はATPという形に変換することで、必要な場所でエネルギーを利用できるようになります。

お金を持っていれば、食べ物を買ったり、電車に乗ったり、さまざまなことに使えるのと少し似ています。ATPも細胞の中で、筋肉を動かす、物質を運ぶ、新しい物質をつくるなど、さまざまな生命活動に利用されます。

しかも、ATPは一度つくったものを長く保存して使うものではありません。生命活動によって次々と消費されるため、細胞ではATPをつくっては使い、またつくるというサイクルが絶えず繰り返されています。ミトコンドリアも、その需要に応じてATPを供給し続けています。

ATPは筋肉を動かすなど、生命活動にエネルギーを渡すとADP(アデノシン二リン酸)などに変わりますが、再びATPにつくり直され、繰り返し利用されています。私たちが起きているときも眠っているときも、細胞の中ではATPをつくっては使うサイクルが続いているのです。

さらにミクロの世界をのぞいてみると……

クリステには、ATPをつくる「ATP合成酵素」という分子サイズの装置があります。この装置は回転する分子モーターのようなしくみをもち、条件によっては1秒間に数十〜100回転以上という速さで回りながらATPをつくります。

\サイズ感だけでなく、スピード感も異次元!!/

わずか1μmほどのミトコンドリア。その内部では、私たちの想像を超えるようなスケールと速さで、生命活動を支えるしくみが動いています。

食べたものや体脂肪がATPをつくるエネルギー源になる

私たちが毎日食べているものは、身体をつくる材料になるだけでなく、ATPをつくるためのエネルギー源にもなります。

食事からとった糖質や脂質、タンパク質などの栄養素は、消化・吸収されたあと、体内でさまざまな形に分解されます。糖質から得られるグルコースや、脂質から得られる脂肪酸などは、ATPをつくるためのエネルギー源として利用されます。

特筆すべきは、おなかや皮下などに蓄えられている体脂肪! 体脂肪は大切なエネルギーの貯蔵庫で、必要に応じて脂肪組織から脂肪酸が取り出され、細胞へ運ばれると、ミトコンドリアでATPをつくるためのエネルギー源として利用されます。

ここでもうひとつ重要なのが「酸素」です。ミトコンドリアは、呼吸によって取り込まれた酸素を利用し、こうしたエネルギー源からATPをつくる一連の代謝で中心的な役割を担っています。

ミトコンドリアには発電以外にも仕事がある

ここまで、ミトコンドリアの主要業務であるATP産生についてみてきましたが、仕事はそれだけではありません。

たとえば、細胞内のカルシウム濃度の調節や、細胞同士・細胞内の情報伝達、脂質やアミノ酸の代謝などにも関わっています。また、活性酸素(ROS)を介したシグナルや、「アポトーシス(apoptosis)」と呼ばれる細胞死のしくみにも関与しています。

さらに、ミトコンドリアは周囲の状況に応じて働き方を変え、細胞が環境の変化やストレスに対応するためのしくみにも関わっています。

ミトコンドリアは、ただATPをつくり続けるだけの「発電所」ではありません。細胞の状態を保ち、変化に対応しながら生命活動を支える、さまざまな役割を担っているのです。

ミトコンドリアは太古、独立した生き物だった

私たちの細胞の中で働いているミトコンドリア。実はその祖先は、10億年以上前には独立して生きていた細菌の仲間だったと考えられています。

現在有力なのが「細胞内共生説」と呼ばれる考え方です。大昔、別の細胞に取り込まれた細菌が消化されずに共生するようになり、長い進化の過程を経て、現在のミトコンドリアになったというものです。

その名残は、現在のミトコンドリアにも残っています。たとえば、ミトコンドリアは細胞の核にあるDNAとは別に、独自のDNA(ミトコンドリアDNA/mtDNA)をもっています。また、外膜と内膜からなる二重膜をもち、自ら分裂して増えるなど、細菌との共通点がみられます。

かつて別々の生き物だったものが共生し、長い進化の時間をともに歩んできた……。そう考えると、ミトコンドリアは私たちの細胞の中にいる、太古からの「相棒」のような存在なのかもしれません。

まとめ|ミトコンドリアは、今日も私たちの中で働いている

ミトコンドリアは、私たちの細胞の中で働く小さな細胞小器官です。食べ物から得た栄養素や体脂肪などをエネルギー源として利用し、生命活動に欠かせないATPをつくるという、大切な仕事を担っています。

その大きさは、わずか1μmほど。二重の膜に包まれ、内膜には「クリステ」と呼ばれる特徴的な構造があります。さらに、融合と分裂を繰り返して形を変え、ATP産生だけでなく、代謝や情報伝達、ストレスへの対応、細胞死などにも関わっています。

その祖先は太古に独立して生きていた細菌の仲間だったと考えられています。長い進化の時間をともに歩み、いまでは私たちの生命活動に欠かせない存在となったミトコンドリア。

考える、食べる、歩く、笑う、眠る……。私たちが意識していない瞬間にも、細胞の中ではミトコンドリアが、それぞれの仕事を黙々と続けています。

私たちが起きているときも、眠っているときも。今日も、私たちの中で。

私の中では、こんな世界が広がっています

私の生命活動を支えてくれるミクロの天使!!!
\ミトたんズ&仲間たち集合/

ミトたんズと仲間たち

(参考文献)
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