ミトコンドリアは50代・60代になっても増える? 質も向上する? 加齢との関係を調べてみた
ミトコンドリアは、加齢によって量や働きが低下する傾向がありますが、年齢を重ねても条件次第で増やすことができます。
たしかに、加齢にともなってミトコンドリアそのものが変化し、取り巻く身体の環境も変わっていきます。でも、諦めないで。じつは、高齢者でも無理のない運動でミトコンドリアの量や機能が向上したという研究報告があります。
この記事では、ミトコンドリアと加齢の関係を確認しながら、ミトコンドリアを増やしたり、今より元気にしたりするための条件を紐解きます。
ミトコンドリアは年齢を重ねても条件次第で増える
ミトコンドリアは、50代・60代になっても増やせるといわれています。量だけでなく、エネルギーをつくる能力など、機能面の向上も期待できます。実際、60〜80歳を対象にした研究では、運動習慣のない高齢者でも、運動によって骨格筋のミトコンドリア量やATP産生能力などが改善したと報告されています。
年齢を重ねてからでも、ミトコンドリアは変わる可能性があります。それなら、50代・60代で諦めてしまうのはもったいないと思いませんか?
もちろん、何もしなくても増えるわけではありません。ミトコンドリアの量や働きには、運動習慣や筋肉量、栄養、睡眠など、さまざまな条件が関係しています。
ミトコンドリアは加齢によって変化しますが、実際に何が起こるのでしょうか。年齢との関係をもう少し詳しくみていきましょう。
ミトコンドリアの基本についてはこちら
ミトコンドリアとは?|私たちの生命活動を支えるエネルギー産生器官
Effects of exercise on mitochondrial content and function in aging human skeletal muscle──National Library of Medicine(アメリカ国立医学図書館)
Skeletal muscle mitochondria in the elderly: effects of physical fitness and exercise training──National Library of Medicine(アメリカ国立医学図書館)
ミトコンドリアは加齢によってどう変化する?
加齢にともなって、ミトコンドリアにはさまざまな変化が起こります。
骨格筋では、ミトコンドリアの量が減少するだけでなく、酸素を使ってATPをつくる能力も低下する傾向があります。また、ミトコンドリアの新生や、傷んだり不要になったミトコンドリアを取り除くしくみ(マイトファジー)など、「つくる」「壊す」のバランスにも変化がみられます。その結果、エネルギーをつくる力が落ちたり、傷んだミトコンドリアの処理が追いつかなくなったりします。
ただし、こうした変化のすべてが年齢だけで起こるわけではありません。身体活動量などの条件をそろえると、若い人と高齢者でミトコンドリア機能の差が小さくなるという研究もあります。つまり、加齢そのものに加えて、年齢とともに身体を動かす機会が減ることも関係していると考えられています。
Skeletal muscle oxidative capacity in young and older women and men──Journal of Applied Physiology
何もしなかったらどうなる? 40代以降にみられるミトコンドリアの加齢変化
では、特別な運動習慣がないまま年齢を重ねると、ミトコンドリアやそれを取り巻く環境はどう変わるのでしょうか。40代以降にみられる、おもな変化をみていきましょう。
【加齢によるミトコンドリアの変化】
◇ミトコンドリアの量が減りやすくなる
◇ATPをつくる能力が低下しやすくなる
◇傷んだミトコンドリアの処理が滞りやすくなる
【加齢によるミトコンドリア周辺の変化】
◇筋肉量が減りやすくなる
◇身体活動量が低下しやすくなる
ミトコンドリアの量や働きが低下すると、筋肉が必要とするエネルギーを十分につくりにくくなります。そのため、以前なら楽にできた運動がきつく感じられたり、長く動き続けにくくなったりします。
これらはすべてが40代以降に起こるわけではありませんが、加齢そのものによる変化に、筋肉量や活動量の低下などが重なって進む傾向があります。
ミトコンドリアに関係する加齢変化には、生物学的な性別による違いもあります。男性と女性では、どのような違いがあるのでしょうか。
男性の場合|筋肉量や代謝の変化が重なっていく
男性は、加齢とともに筋肉量や筋力が低下する傾向があります。また、男性ホルモン(テストステロン)も年齢とともに緩やかに低下し、筋肉量の維持に影響します。
【男性にみられるおもな変化】
◇筋肉量・筋力が低下しやすくなる
◇テストステロンが緩やかに低下する
◇筋肉のミトコンドリア量や機能が低下しやすくなる
◇基礎代謝が低下し、体脂肪が増えやすくなる
筋肉はミトコンドリアを多く必要とする組織です。筋肉量が減り、身体を動かす機会も減れば、ミトコンドリアを維持するための刺激も少なくなります。
女性の場合|更年期にはホルモン環境の変化も加わる
女性も加齢とともに筋肉量や筋力が低下する傾向がありますが、更年期には女性ホルモン(エストロゲン)が激減し、エネルギー代謝やミトコンドリアの働きにも大きな変化が起こります。
【女性にみられるおもな変化】
◇筋肉量・筋力が低下しやすくなる
◇更年期にエストロゲンが激減する
◇筋肉のミトコンドリア量や機能が低下しやすくなる
◇糖や脂質からエネルギーをつくる能力が低下傾向
こうした変化が重なることで、以前より太りやすい、やせにくい、疲れやすいと感じることもあるようです。とくに筋肉量や筋力の低下が進むと、日常生活にも支障をきたすサルコペニアにつながる可能性も。
50代・60代でもミトコンドリアは増やせる? 70代以降でも可能性はある?
加齢によってミトコンドリアの量や機能は低下する傾向がありますが、運動に反応して変化する力が失われるわけではありません。
実際、70代を含む高齢者でも、運動によって骨格筋のミトコンドリア量やATPをつくる能力などが向上したという報告があります。70代でも変わる可能性があるのなら、50代・60代で諦める手はないでしょう。
ただし、変化の大きさには個人差があり、若いころと同じように増えるとは限りません。
なぜ年齢を重ねても増える? ミトコンドリア生合成のしくみ
ミトコンドリアには、運動などでエネルギーの需要が高まると、その刺激に応じて量や機能を高めるしくみがあります。これがミトコンドリア生合成です。
その中心的な役割を担うのが、PGC-1α(ピー・ジー・シー・ワン・アルファ)と呼ばれる因子。運動によって筋肉に刺激が入るとPGC-1αが働き、ミトコンドリアをつくるために必要な遺伝子の働きを促します。このしくみは高齢になっても働くため、運動によってミトコンドリアの量や機能を高めることができます。
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| 私の中では…総司令官(PGC-1α)の増殖の号令でミトたんズが増えていく様子が、日々脳内再生されています。 |
ミトコンドリアを増やすには? 40代以降に意識したい4つの条件
年齢を重ねてからミトコンドリアを増やすには、運動だけでなく、栄養や回復まで含めて身体の環境を整えることが大切。ポイントは、「適度な有酸素運動」「筋力トレーニング(筋トレ)」「十分な栄養」「十分な睡眠と回復」です。
適度な有酸素運動
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、ミトコンドリアを増やす代表的な方法です。運動によって筋肉のエネルギー需要が高まると、PGC-1αを介してミトコンドリア生合成が促されます。
ポイントは、「きつければきついほどいい」わけではないこと。無理なく続けられる強度でも、継続することでミトコンドリアの量や機能の向上が期待できます。
ミト活辞典では、中強度・高強度の有酸素運動と区別するため、比較的軽い強度で行う有酸素運動を「低強度有酸素運動」と表現します。
筋力トレーニング(筋トレ)
加齢とともに減りがちな筋肉を維持するには、筋トレも欠かせません。
筋肉は、ミトコンドリアが比較的多く存在する場所です。いわば、ミトコンドリアが暮らす「土地」。ミトコンドリアを育てるなら、住める土地もできるだけ広く保っておきたいですよね。
また、筋トレそのものも筋肉のミトコンドリアに刺激を与えます。有酸素運動とは異なる刺激になるため、どちらか一方ではなく、組み合わせて行うのがおすすめです。
十分な栄養
ミトコンドリアを増やすには、増築するための材料となる栄養素も必要です。
【ミトコンドリア増築に必要な栄養素】
◇タンパク質:膜の構成成分や、内部で働く酵素などの材料
◇脂質:内膜・外膜などをつくる材料
◇ビタミン・ミネラル:エネルギー産生やさまざまな代謝反応を支える
運動で「増やそう」という刺激を入れても、材料が足りなければ増築工事は進みません。必要な栄養素を食事からしっかり摂ることも、ミト活の基本です。
睡眠&回復時間の確保
運動は、ミトコンドリアを増やすための「刺激」です。といっても、刺激を入れ続ければいいわけではありません。運動後には、身体がその刺激に適応するための時間も必要です。
とくに睡眠中は、身体の修復や回復に関わるさまざまな働きが進みます。もちろん、ミトコンドリアも休んでいるわけではありません。エネルギーをつくりながら、傷んだ部分の修復や入れ替え、新しい構成成分をつくるなど、メンテナンスを続けています。運動する時間だけでなく、休む時間まで含めてミト活と考えておきましょう。
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| 私の頭の中に住んでいるミトコンドリアのミトたんズ。高強度トレーニングをやりすぎると、悲鳴をあげて「ブラック企業ミ💢」と訴えてきます。 |
遅くはない? 身体は年齢を重ねても変化できる
「ミトコンドリアを増やすなら、何歳まで?」と気になる人もいるでしょう。ミトコンドリアは加齢とともに量や機能が低下する傾向があります。でも、ここまでみてきたように、年齢を重ねても運動などの刺激に反応する力は残っています。
大切なのは、若いころの身体に戻そうとすることではなく、今ある身体に適切な刺激を与え、栄養をとり、しっかり回復させること。その積み重ねによって、ミトコンドリアも身体も少しずつ変わっていきます。
50代でも、60代でも、その先でも。「もう遅い」と諦める必要はなさそうです。
まとめ|ミトコンドリアと年齢についてわかったこと
ミトコンドリアは、加齢とともに量や機能が低下する傾向があります。一方で、年齢を重ねても運動などの刺激に反応し、量や機能が向上する可能性があることもわかっています。
この記事のポイントを振り返ってみましょう。
◇ミトコンドリアは加齢によって量や機能が低下しやすくなる
◇加齢だけでなく、筋肉量や活動量、ホルモン環境なども影響する
◇50代・60代、さらに70代以降でも変化する可能性がある
◇有酸素運動や筋トレがミトコンドリアへの刺激になる
◇ミトコンドリアの増築には栄養素も必要
◇運動だけでなく、睡眠と回復の時間も大切
年齢による変化を止めることはできませんが、未来の自分のためにできることはあります。今日からでもミト活を始めてみませんか?
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